「私が、生きる肌」アントニオ・バンデラス主演 狂気の愛とエロスの世界、そして希望

スペイン映画

スペインが世界に誇る俳優のひとり、アントニオ・バンデラス主演の「私が、生きる肌」。スペイン映画独特の世界観と「あっ!」と驚くストーリー展開に引き込まれてしまいます。

あらすじ

世界的な形成外科医ロベル・レガル。彼が暮らすトレドの大邸宅の一室にはベラと名乗る美しい女性が軟禁されている。ベラは他界したロベルの妻ガルに瓜二つの外見を持つ。

ある日、家政婦マリリアの息子セカが強盗による指名手配をされ、マリリアに助けを求めて屋敷に現れる。マリリアは渋々セカを受け入れるが、セカはベラの存在を知るとベラをガルと思い込む。そしてロベルの留守中にベラを犯してしまう。ちょうどその時、ロベルが帰宅しベラを犯したセカを射殺してしまう。ロベルがセカの遺体を埋めている間、マリリアはベラにロベルの出生や他界した妻ガルのことを語り始める…

*ここからは、ネタバレを含むレビューになります。まだ映画本編をご覧になっていない方はご注意下さい。

【ネタバレあり】レビュー

愛と狂気は紙一重だと感じた内容だった。

家政婦マリリアの話から、実はロベルの妻ガルはセカと不倫関係にあり、駆け落ちの途中で交通事故に遭い大火傷を負ってしまったとのこと。更には、一命は取り留めたものの自らの変わり果てた姿に耐えられず娘の目の前で飛び降り自殺をしてしまったのだ。娘は母親の自殺を目撃してしまい、精神が不安定になってしまった。

そんな娘もパーティーで出会った男性と良い雰囲気になり、、と思っていたら突然パニック状態になり自殺してしまう。娘の自殺を「男性に強姦されたことによるもの」とロベルは思い込む。そして、その男性を恨みに思い、監禁して妻そっくりに変えるための実験台にしてしまう。

この男性も、まさかパーティで良い雰囲気になった女性が精神に病気を抱えているなんて思わなかっただろうし、まして自殺してしまうなんて想定外の出来事だっただろう。しかも、実際は娘のことを犯してはいない。

どちらかというと、この男性だって被害者なのでは?と思うのに、娘の父親から逆恨みされて軟禁された挙句、性転換手術をされてしまうなんて。。。不運すぎる。

たしかに男性も軽い行動を取った落ち度はあるが、、娘が精神を病んだ元々の原因は母の自殺であるわけだし、全ての元凶はロベルの妻ガルにあると思うのに「愛ゆえに」その事実は完全にスルーで、男性に全ての恨みをぶつけ、人権や倫理感も無視して妻に作り変えてしまうロベル。更には妻そっくりになった男性と男女の関係を持とうとしたり、、狂気としか思えない。

妻が愛人と駆け落ちをして自分の元から離れようとしていたこと、火傷により精神を病み、自殺をしてしまったこと。そして娘も自殺。この事実をロベルは受け入れることができなかったんだろうなと思った。誰かのせいにしないと、自分を保ち続けることができなかったと。(狂気じみた行動はとっているが、、)一見完璧な人生を謳歌しているように見えるロベルだが、彼の喪失感は底知れぬもので、その抜け落ちた穴を埋めるために完璧な肌を追い求めたのかもしれない。

ベラは最後にロベルを射殺し邸宅から逃げて母親のもとに帰る。理不尽な仕打ちを受け、姿かたちは変わっても、囚われの身から脱却して「自分を取り戻した」という希望が見えたラストが印象的だった。

逆に言うと、ロベルは亡き妻に常に囚われて、自分を取り戻すことができなかったんだなと思った。ロベルが囚われの身から脱却する方法は「死」しかなかったのかもしれない。

最後に、全身タイツに身を包んだ女性のヨガポーズがドラマチックな音楽と共に映し出される映画の始まり方や、トラのボディスーツを着た男性が出てきたり、、と絵的に何ともシュールなシーンが盛り沢山。そこも見どころの一つだと思う。

作品情報・キャスト

・ロベル・レガル – アントニオ・バンデラス

・ベラ・クルス – エレナ・アナヤ

・マリリア – マリア・パレデス

・ビセンテ – ジャン・コルネット

・セカ – ロベルト・アラモ

・ノルマ – ブランカ・スアレス

・ビセンテの母親 – スシ・サンチェス

▪️製作国 スペイン

▪️日本での一般公開 2012年5月

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